せきしろ×又吉直樹『カキフライが無いなら来なかった』

自由律俳句の本。まずもって、469句を詠んだのが凄いことで、しかもアベレージが高い。世間に対する軽い違和感を明示的にしている、といえば言い過ぎだが、生きるって大変だなぐらいは思わせてくれる一冊。私が好きな句をいくつか抜粋。

転んだ彼女を見て少し嫌いになる
「ヘビ玉ならまだあるぞ」の言葉は飲み込んだ
旅先で聴いて少し好きになった嫌いな曲
偶然保護色になっている女
新館本館どちらの裏か再度番長に聞く
側転をしてはこちらを見てくる少女
独りだから静電気を無視する
よく知らない人だけど髪切ったのは一目瞭然
異性を意識しただけのパーマ
この雨で一番濡れている人登場
ACミラン対ローソンみたいな色の草サッカー
阿呆な人が的確なアドバイスをくれた
まだまだくすぶれる

Connie Willis『インサイダー疑惑』(『マーブル・アーチの風』収録)

要するにラブコメ。申し訳ありませんが、ヒロインのキルディが可愛すぎてニヤニヤが止まりません。インチキ霊媒師に取り憑いたオカルト嫌いの霊(本物)が「霊なんてインチキだ」という自己矛盾的な主張を証明するっていうひねくれた仕掛けでストーリーは二転三転。その証明の成否に恋の行方がかかっているキルディがみせる愛おしさに読者は身悶え二転三転。

冲方丁『マルドゥック・スクランブル』

圧巻な本なのです。主人公ルーン=バロットの前に立ちはだかるベル、アシュレイ、ボイルドはもちろん、ひきたて役の雑魚も格好いいです。平均をはるかに超えた能力を持つ人たちが、それをさらに上回るバロットにこてんこてんにやられつつも、それでも真摯に人生を賭けて戦う姿勢にはどこか悲哀のこもったプライドがあって、読みながらもどんどん胸が熱くなり、私は思わず夕日に向かって「ペニシリーン!」と意味不明なことを叫ぶのでした。

R.A.Heinlein『銀河市民』

ラスト尻切れ気味の貴種流離譚。主人公ソービーは奴隷からはじまって、貴族の当主にまでなるんだけど、今ひとつ努力が足りないというか、あまり目的意識のないやつなので、読んでるこっちも気分が盛り上がらない。悪い意味でコンプレックスの足りないやつなんだと思う。
たとえば奴隷時代の自分にすごいコンプレックスを持っていて、ある日、過去を知る女性がやってきて「過去をばらされたくなかったら、今日からお前はポチよ」「……はい」。で、屈辱を耐え忍びながら、やがてそれが歓びに――とか、そういうストーリーだったらすごいよかった。単に私の好みですけど。

カトウハルアキ『夕日ロマンス』

■こういうすっげーおもしろいやつに出会うから、マンガを読み続けてるんだなと思います。
■とりあえず、照れ笑いがすっげー可愛いです。


野尻抱介『大風呂敷と蜘蛛の糸』(『沈黙のフライバイ』収録)

■宇宙を目指す少女の話です。
■傑作。たぶん、教科書に載る。
■ロボット工学の第零法則は、「ロボットは人類に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人類に危害を及ぼしてはならない」
■SF作家の第零法則は、「人間は人類に夢を与えなければならない。また、その夢を看過することによって、人類に停滞を及ぼしてはならない」
■おとめちっくSFと名付けよう。

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